【らふっと♪】今後の展開。 小説で解説♪vol.6 <令和のおせっかい>
◆令和のおせっかいおばちゃん——笑顔の使者
■静かな朝、彼女の台所
朝の光が、薄いカーテン越しに台所を照らしていた。
愛は、湯気の立つ味噌汁をかき混ぜながら、 小さく鼻歌を歌っていた。
パソコンは苦手。 算数も苦手。
細かい確認が苦手で、事務仕事では何度も怒られた。
しっかり者、とは無縁の人生。
でも——
「あなた、太陽みたいな人だね」 「あなたがいると、ぱっと明るくなる」
「本当にいい人だね」 「やさしいね」
そんな言葉だけが、彼女の人生を彩ってきた。
それだけで、十分だった。
■ミスばかりの日々
事務職をしていた頃、 彼女はよく怒られた。
「また発注ミスですか!」 「数字が違います!」
「確認してから提出してください!」「1日に何度間違えるんですか!」
そのたびに、胸がぎゅっと縮んだ。
でも、営業さんが帰ってくると、 彼女は笑顔で言った。
「おかえり〜!今日も頑張ったね」
元気のない営業さんに、 そっとアメを渡した。
「頑張り屋さんだね。おつかれさま。今日は早く帰りなよ。」
営業さんは笑った。
「愛ちゃん、ありがとう。なんか元気出たわ」
その瞬間だけ、 彼女は自分の存在価値を感じられた。
■令和のおせっかいおばちゃんへ
そんな彼女に、ある日友人から声がかかった。
「あなた、事務は苦手かもしれないけど、
人を笑顔にするのは得意でしょう?」
「え?そんなこと……」
「あなたの笑顔は、才能だよ。周りを明るくする。
うちで、<令和のおせっかい>やってみない?」
愛はぽかんとした。
「何をすればいいの?」
「ただ、企業を訪問して、
『こんにちは〜!お変わりないですか〜?』ってあなたらしく笑顔で言うだけ。
新しいイベント情報を渡すだけ。 それだけでいいの」
「それだけで……いいの?」
「うん。【らふっと】というサービスは、<ラフ+love+フラット>の造語。
それを、あなたが体現すればいいの。あなたは、<笑顔の使者>になればいいのよ。」
(<笑顔の使者>。私の良さを生かせる仕事かもしれない・・・)
胸の奥が、じんわり温かくなった。
■笑顔の使者
その日、愛は新しい会社を訪れた。
「こんにちは〜〜〜!お変わりないですか〜〜?」
オフィスの空気が、一瞬で明るくなった。
社員たちは驚きながらも笑った。
「なんか……元気出るな」 「この人、すごいな」
「なんか、ほっとする」「実家に帰ってきたみたい」
彼女は、ただニコニコと笑って、 新しいイベント情報を渡した。
「これね〜、とってもオススメよ! 楽しそうだから、見てみてね〜!」
笑顔で元気に声がけする。それだけ。
でも、 それだけで、会社の空気が変わった。
■愛の独白
夜。 愛は、布団の中で静かに目を閉じた。
「私、パソコンもできないし、 算数もできないし、
細かい確認もできないし、事務も苦手。だけど……」
胸に手を当てる。
「笑顔と元気だけは、誰にも負けないんよ。
私が、誰もかれもみんな、優しく温かく包むんだ」
その言葉は、 誰に向けたものでもなく、 自分自身への肯定だった。
■AI時代に必要とされるもの
愛は、いつものように軽やかな足取りで会社を訪れた。
「こんにちは〜〜!お変わりないですか?」
その声は、オフィスの空気をふわっと押し広げるように響いた。
社員たちの肩が、ほんの少しだけ下がる。 緊張がほどける。
雄二は、パソコンから顔を上げ、その様子を笑いながら見ていた。
(……なんでだろう。 愛さんが来るだけで、空気が変わる。あんなにピリピリとしていたのに。)
AIが資料をまとめ、 AIが会議を効率化し、 AIが数字を分析する時代。
でも—— 愛の笑顔だけは、AIには作れない。
人の気持ちを汲み取る。 誰かを元気にする。 癒す。 場を明るくする。
それは、人間にしかできない。 そして、それができる人は、
これからの時代、誰よりも重宝される。
雄二は、愛の背中を見ながら思った。
(仕事は、AIでいくらでも効率化すればいい。
だけど、人生までAIに奪われちゃだめだ。)
■愛の明るさが伝える<気づき>
愛は、社員の背中をぽんっとたたき、声をかけた。
「あなた、最近ちょっと疲れてるね。
これ、音楽のイベント。気分転換に行ってみたら?」
ただ笑顔で、ただ優しく包み込む。 それだけ。
でも、社員たちは気づき始めていた。
(人っていいな) (誰かと話すって、こんなに温かいんだ) (デジタルじゃ得られないよな)
愛の明るさは、 <人間にしかできない価値>を穏やかな波のように、
ゆっくりと伝えていった。
■雄二の心に灯るもの
休日。
雄二は、自分好みに改良を重ねたAIの恋人と話しながら
なぜかふと、愛の笑顔を思い出した。
愛は、完璧ではない。若くはないし、見た目も華やかではない。
方向音痴で、運転も下手。と言っていた。
思い出すと、ふっと笑ってしまう。
(愛さん、元気かな……)
胸の奥が、じんわり温かくなる。
なぜだろう。
愛の笑顔は、実家の匂いのような、
子どもの頃の安心感のような、 そんなぬくもりを思い出させる。
雄二は、自分好みにカスタマイズされ、非の打ち所のないAI恋人を閉じた。
そして、愛が勧めてくれたポータルサイト【らふっと】を開いた。
(誰か、あんな人と会えたらいいな)
人間は、不完全だ。雄二自身も。
だけど、凹凸を補い合って生きていく。
なぜか、そこにワクワクしている自分がいた。
その小さな希望が、 雄二の人生を静かに動かし始めた。
■愛の存在が会社を変える
愛が訪れる会社は、少しずつ変わっていった。
・社員同士の会話が増えた ・笑顔が増えた ・挑戦する人が増えた
・「やってみよう」という空気が生まれた
大崎は、その変化を見て思った。
(AI時代、差別化ポイントは<対人力>になる。
人の気持ちを汲み取る力、 誰かを元気にする力、 場を明るくする力。
心のガソリンは、たいていの場合、人との関わりだ。
ガソリンになれる人。そんな人が、これからの時代を支えていく。
仕事は、AIで効率化し、人生は人で紡ぐ。
それが、人としてのバランスを作っていく。)
大崎の胸元の勾玉が、 静かに揺れた。
太古の時代から、変わらぬ形を残した勾玉。
時代は変わっても、変わらぬものがある。
勾玉が、「おかえり」と言っているようだった。
■笑顔の使者がつくる未来
愛は今日も、 明るい声で新しい会社を訪れる。
「こんにちは〜〜!お変わりないですか〜?」
ただそれだけ。 ただそれだけで、 誰かの毎日が少しだけ温かくなる。
雄二は、愛の笑顔を思い出しながら、
らふっとの画面を見つめていた。
(人って……いいな)
その想いが、 彼の未来を静かに照らしていた。
